灼眼のシャナ

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作品情報

シリーズ数 3シーズン
話数
  • 灼眼のシャナ2005年26話
  • 灼眼のシャナⅡ(Second)2007年24話
  • 灼眼のシャナ2005年24話

全74話

あらすじ

悠二、おまえは私が護るから。 平凡な高校生、坂井悠二の日常は、ある日突然消滅した。異界から渡り来た、人の“存在”を灯りに変えて、喰らうという化け物“紅世の徒(ぐぜのともがら)”が悠二を襲う。逃げることも忘れ呆然と立ちすくむ悠二を救ったのは、紅蓮の髪と瞳をもつ謎の少女だった。そして──その少女は、悠二にこう告げた。「おまえはもう【存在】していないのよ」と。

灼眼のシャナ2005年

全ての終わり、一つの始まり

坂井悠二の高校生活は始まったばかりだった。また、それはずっと続く日常になるはずだった。だが、悠二は見てしまった。学校の帰り道、商店街の風景が止まり、人々が燃え、その炎をマネキンと巨大な人形が吸い込んでいく、あまりにも異様な景色を。大太刀を振るう、炎髪と灼眼の少女を。それは、悠二の高校生活に終止符を打つに十分な事件だった。

灯る炎

坂井悠二は死んでいた。今の彼は、“紅世の徒”に存在を食われた後の残りかす。残りわずかな時間で、誰にも気付かれず消え去っていく灯火。人間には見えるはずのないそれを、灼眼の少女はトーチと呼んだ。だが、悠二には見えた。そして、クラスで机を並べているクラスメイト・平井ゆかりの中にもトーチがあった。今にも消えそうなトーチが。

トーチとフレイムヘイズ

平井ゆかりは死んでしまった。正確にはトーチの火が消えたのだが、悠二にとってそれは死と同じ意味を持っていた。その悲しみの中、悠二は灼眼の少女に名前を付ける。「君はシャナ、もうただのフレイムヘイズじゃない」。だが、その翌日、学校に行くとクラスメイトが過去の存在も消え失せたはずの平井ゆかりを覚えていた。…彼女はそこにいた。

惑いのフレイムヘイズ

シャナは悠二の家にいた。その身に宝具を納めた“ミステス”である悠二を、頻繁に事件を起こしている“紅世の徒”フリアグネから守るため。悠二を囮にフリアグネを狩るために。だが、“紅世の徒”を追う新たなフレイムヘイズが現れた。“紅世の王”蹂躙の爪牙マルコシアスと、弔詞の詠み手マージョリー。今、フレイムヘイズ同士の戦いが始まる。

それぞれの想い

フリアグネは気付いた。自らの計画のため配置したトーチが徐々に消えて行くことを。 フレイムヘイズではない何者かがこの街にいることを。そして、その者を狩るため力を使った時、弔詞の詠み手マージョリーと接触する。一方、シャナと離れ同級生の吉田と出掛けた美術展で、悠二は新たな“紅世の徒”と会話をしていた。彼の名は、屍拾いラミー。マージョリーが追っている徒だった。

交錯・発動・対決

シャナは自分の気持ちに苛立っていた。ただのトーチである悠二の存在が、その要因なのか。その苛立ちが頂点に達した時、フリアグネの計画が動き出した。それに気付き、戦いの場へ急ぐシャナ。奴の自在式を止めなくては、この街は崩壊する。残された悠二の中で、ラミーの言葉がリフレインする。「本当にいいのか、今のままの君で」。そして悠二は決断する。

二人のフレイムヘイズ

「シャナと一緒に戦う」そう悠二は言った。共に戦うために鍛えてもらおうと自ら申し出た、それが認められただけではない。シャナにとって、悠二はただのトーチではなくなったのだ。だが、その切っ掛けを与えてくれたラミーは、マージョリーの手に落ちようとしていた。シャナとは相入れないフレイムヘイズ。その原動力は“紅世の徒”への過剰なまでの復讐心だった。

麗しのゴブレット

マージョリーは戦闘狂と化していた。群青の炎を散らすトーガをまとい、“紅世の徒”の討滅を実行するために。だが、その目前に立ち塞がった少女は言う、自分たちの使命は“この世と紅世のバランスを守る”ことだと。マージョリーはトーガを分裂させシャナを囲むが、それは先の戦いと同じ結果は生まなかった。悠二という力を得て、シャナは変わっていた。二人の戦いの結末は……。

恋と欲望のプールサイド

シャナはそれが始めてだった。「お風呂みたいに気持ちいいのかな?」。太陽が容赦なく照りつける日、クラスメイトの池が持ってきた「御崎ウォーターランド」の招待券。オープンしたばかりの話題の巨大屋内プールに、誰も喜んだ。だから、その場で日曜日に一緒に行こうと盛り上がった。それは悠二も同じだった。だが、そこには戦いが待っていた。シャナがココで悠二と一緒にいる限り、受けなければならないもう一つの戦い。悠二の母が、せっかくだからと用意してくれた水着を付けたシャナと、やはり学校では見ることの出来ない水着姿の吉田一美が、各々の思いをぶつける。

絡まる想い

悠二にとって、それは日常になりつつあった。「強くなり、シャナと…炎髪灼眼のフレイムヘイズと共に戦いたい」。だからこそ、行なっていた日々の鍛錬。だが、家で、学校で、シャナといる時間が長くなると、悠二はそれが以前と同じ日常の延長かのように感じ始めていた。一方、シャナの思いはより強くなっていた。「重要なのは悠二が強くなること。一緒に戦うこと」。今、ふたつの思いは、互いの影すら見失おうとしていた。燐子が現れたのは、そんな時だった。出会い頭に人を襲い、存在の力を喰らう燐子に対峙するシャナ。しかし、彼女の側に悠二の姿はなかった。

悠二とシャナとキス

シャナは新たな力に慣れ始めていた。アラストールの力をシャナがイメージすることで具現化する炎の翼と炎の大太刀。その鍛錬のためにシャナは悠二の力を必要とし、悠二はシャナに必要とされることで自信を得ていた。以前とは違う間柄へ変わりつつある二人。だが、アラストールはそこにひとつの問題を見出していた。シャナに対する悠二の有り様をどこまで許容するか。そして、シャナに優しく接する悠二の母・千草の存在。このままでは、優秀なフレイムヘイズとしての教えしか受けてこなかったシャナが変わってしまう…。満を持したアラストールは、千草との直接対決を決意する。

ゆりかごに花は咲いて

悠二は池に、シャナは吉田に問いつめられた。自分の気持ちから逃げることが、人の好意を無心で受けることが、他の人たちを苦しめているのだろうか。誰もが若き日に味わう葛藤。しかし、二人にはそれ以上に心を向けなければならないことがあった。紅世の徒の討滅。日常を破壊する奴等が、再びこの街に現れたのだ。それも3人。その力に不審を感じたシャナとアラストールは、悠二にその調査を任せ、敵の封絶に向かう。しかし、封絶の中には2人の兄妹しかいなかった。ソラトとティリエル。彼らの真の狙いは人の存在の力ではない。シャナの持つ大太刀・贄殿遮那だった。

校舎裏の宣戦布告

街は山吹色に染められていた。贄殿遮那を狙うソラトとティリエルが操る巨大な植物の花びらが空を舞っている。その中で、真紅の炎を纏ったシャナの大太刀が、植物の蔦を切り、ソラトを蒸発させる。だが、それは一瞬でしかなかった。前もって仕掛けられていた自在法のためか、ソラトの再生は異常に早い。やがてシャナは捕らえられ、その手から贄殿遮那が落ちた。一方、シャナの戦いを知ったマージョリーとマルコシアスは、封絶の中で動くトーチを見つけていた。悠二とマージョリー。目的は違うが、望む結果は同じ二人が、手を組む。

偉大なる者

まずカリカリな部分を少し食べて、次にモフモフの部分を食べる。それがシャナが一番好きなメロンパンの食べ方だ。シャナがメロンパンを好きになったのは、まだシャナがフレイムヘイズになる前のこと。場所は、この世からも紅世からも見えない場所・天道宮。そこに居たのはアラストールと、シャナの生活面を世話するヴィルヘルミナ、そしてシャナがシロと呼ぶ鍛錬の相手。限られた人物が、理想のフレイムヘイズを生み出すため、十分な時間を掛けシャナを育てていた。そして、その日が来た。いや、予定より、予想より早くその日が来てしまった。

炎の生まれた日

天道宮から虹が登った。その輝きは天道宮を離れていたヴィルヘルミナの目にも入っていた。ショッピングモールで徒と対峙していたヴィルヘルミナは、その場から逃げる様に、天道宮へ踵を返す。だが一足遅く、天道宮の中にいたシャナの前には、ひとりの徒が現れていた。新たなフレイムヘイズ、新たな炎髪灼眼の誕生を阻止するため、現れたその男の名はウィネ。シロを驚かせ、徒を天道宮へ招いてしまった責に動揺するシャナに、戻ってきたヴィルヘルミナは言う「この生活は不要になった」「もう大丈夫」だと。それは、新たな道、フレイムヘイズへの扉が開かれた瞬間だった。

炎髪灼眼の討ち手

炎に照らされ、ひとりのフレイムヘイズが生まれた。「よくぞ降り立った、我がフレイムヘイズよ」「ようこそ私に、天壌の劫火アラストール」。長い炎髪が揺れ、鋭い灼眼が煌めく。長らく待ち望んでいた契約は達成された。だが、彼女がこの世に慣れるまでの期間を邪魔されないためにも、天動宮に踏み込んだ徒を逃すわけにはいかない。ヴィルヘルミナとシロは新たな決意を胸にその一歩を踏み出す。一方、フレイムヘイズになったばかりの少女は、数々の徒やフレイムヘイズを倒してきた伝説のミステス「天目一個」を前に、初めての、そして最大の危機に陥っていた。

新たなる序章

悠二にひとりでの鍛錬を言いつけ、シャナは台所に立っていた。毎日のように悠二に渡される吉田一美の弁当が、それを食べている悠二が嫌だった。だから、千草に料理を教わることにした。しかし、これまで一度も料理をしたことのないシャナがそうそう上手くなるはずもない。そこで千草は、気分を変えさせようとミサゴ祭へ行くよう提案する。一方、そんなシャナの気持ちを知らない悠二は、祭に一緒に行きたいという吉田の誘いを受けてしまう。ミサゴ祭を明日に控え、悠二へ告白をする決意を固める吉田一美。だが、その前にひとりの少年が立ち塞がる。少年の名はカムシン。御崎市に現れた新たなフレイムヘイズ。

砕ける願い

吉田一美は、世界の本当の姿を見てしまった。調律師カムシンから手渡された片眼鏡。それを覗くことでトーチの存在を目の当たりにした吉田は、ある心配を抱く「…坂井くんは?」一方、悠二はシャナと共に御崎市から出ることを考え始めていた。それは、マージョリーと一緒にいる佐藤や田中も同じだった。そして、ミサゴ祭当日。各々の思いと決意を胸に神社へと集まる面々。だがその時、何者かが配した自在式が動き出した。気配を察し、3人のフレイムヘイズが走りだす。そして、悠二や田中たちも…。

戦いの中で

シャナは吉田一美に告げた「私はフレイムヘイズ」だと。人々を襲う徒という化け物、悠二がトーチだったこと、そして“クラスメイトのゆかり”=“シャナ”が違う世界の存在だったこと…。一度に押し寄せた非日常の荒波に、吉田一美は混乱した。だが、シャナは言う「この街の歪みを直すのにお前が必要」だと。一方、悠二は封絶の中で動く佐藤に出会い、自分がミステスであることを知られてしまう。紅世の存在を知る者たちが次第に連なって行く中、祭の空を飛び交う鳥の燐子を生み出した徒、教授の目的が見えてくる。

非情のヴィルヘルミナ

悠二の頬に涙が流れた。それは、もう死んでいる自分に温かい体と心があると言われたから。生まれ育った温かな街を思い出したから。悠二の心が自分と共にいないことに気付き、戸惑うシャナ。その時、ひとりの人物が現れた。ヴィルヘルミナ。フレイムヘイズになる前の自分を知り、フレイムヘイズになろうとした自分を知る存在に、シャナは暫しの安息を得る。だが、ヴィルヘルミナの目的は、零時迷子を徒に渡さないため如何にするか…その策を実行すること。そこにはミステスである悠二の破壊も含まれていた。

遠ざかる想い

悠二は決断した「シャナと共にこの街を出る」。自分=零時迷子を狙う徒から、自分の街を、友を、大切な人々を守るために。だが、シャナはそれを承知してはくれなかった。シャナが悠二に求めるものは、そんなものではなく、また悠二にはシャナの気持ちが理解できなかった。各々の思いがゆっくりと離れて行く中、祭で使われた飾りに火が付けられる。あの賑わいの残り火。あの戦いの残骸。見守る人々から上がる歓声と、立ち上る煙。だがその時、その上空に再び自在式が浮び上がる。

揺らぐ炎

悠二がシュドナイにさらわれてしまった。連れて行かれた先は、御崎市上空に現れた星黎殿。シュドナイたちバル・マスケの城砦だ。バル・マスケは悠二を、零時迷子を使って一体何をしようというのか。ベルペオルの口から出た「存在の泉」とは何か。一方、佐藤と田中、そして吉田一美は、悠二を助けるためにはどうすればいいかを考えていた。そして、決断する。佐藤と田中は宝具・ブルートザオガーをシャナに託し、一美はシャナに悠二を助け出して欲しいと願う。フレイムヘイズであるシャナは、悠二の死をも厭わない相手かもしれない、しかし平井ゆかりになら頼めると。

星黎殿の戦い

シャナは星黎殿へ突入した。だがそこには、教授と呼ばれる紅世の王・探耽求究よって罠が仕掛けられていた。その罠に捕らわれ、シャナとヴィルヘルミナの身体から抜けて行く存在の力。そして、襲いくる数多の燐子たち。一方、零時迷子によって生み出され、星黎殿から溢れ落ちる存在の力は御崎市を満たし、これまでにない現象を見せ始めていた。頂の座・ヘカテーの中に取り込まれていく零時迷子と悠二の記憶。だがその時、星黎殿の存在に気付いたもうひとりのフレイムヘイズが現れる。

紅蓮の想い

幾本もの光の柱が立ち並んだ御崎市。その上空では、いつ終るとも言えぬ戦いが繰り広げられていた。ヴィルヘルミナのリボンが舞い、ベルペオルの鎖と交錯する。トーガをまとうマージョリーと、変身したシュドナイが激しい炎を撒き散らす。存在の力が尽きることなく供給されるがゆえに、熾烈を極める戦い。その根幹にある零時迷子=悠二と、彼を取り込んだヘカテーを前に、シャナは言う。「悠二を返してもらう」。それは、ただのフレイムヘイズではなく、炎髪灼眼のシャナの決意だった。シャナとそして悠二の戦いの結末は…。

Season 1

Season 1

灼眼のシャナ灼眼のシャナⅡ(Second)2007年

再びの刻

夏休みが終わり、2学期が始まった。いつもと変わらない校舎。積極的に吉田さんに声を掛けてる池。妙にぎこちない緒方と田中。シャナを心配し、学校を視察しようとするヴェルヘルミナ。シャナと共に闘ったあの夏祭りの夜がまるで嘘だったかのような風景に、悠二は嬉しささえ感じていた。だが、悠二はそんな風景に違和感をおぼえ始める。シャナが英語教師に意見するのも、吉田さんが持って来てくれた手作りのお弁当も、まったく同じことを自分は経験しているのではないか。それはやがて確信に至り、この世界から抜け出すべく、悠二は1人で姿の見えない“徒”に立ち向かおうとする。

全ての序章

夢を操る“徒”、“戯睡郷メア”。だが、悠二の活躍でその自在法は破られ、シャナが振り下ろした一太刀であっけなく倒れた。封絶が解かれた世界はそれ以前と変わりなく、翌日もまた、悠二はいつもと変わらぬ朝を迎えていた。ただそこにも僅かながらも変化があった。朝の鍛錬の相手がヴィルヘルミナだったこと、そして鍛錬を終えた悠二にシャナが「悠二は強くなるよ」と声を掛けたことだ。……しかし、戦いの時は再び始まった。封絶の中に取り込まれた悠二とシャナの前に本当の姿を現す“戯睡郷メア”。その力によって現実化する強大な敵。夢を覚ます為のキーはどこにあるのか。そして“メア”の狙いとは……。

疑惑の転校生

その少女を見た時、悠二は驚き、シャナは封絶によって空間と時間を止めた。少女の名は近衛史菜。ついさっき、クラス担任から紹介されたばかりの転校生だ。御崎市を襲ったバル・マスケのひとり、ヘカテーにあまりにも似過ぎている史菜。とはいえ、封絶で動けない史菜が“徒”とは思えず、シャナ達はしばらく様子をみることにする。海外暮らしが長く、学校生活での勝手が分からないのか、まるでどこかのお姫様のような言動や行動をしてしまう史菜に、優しく接するするクラスメイトたち。だが、シャナは疑いを解くことはなく、とある計画を準備していた。そして、その時が訪れる。

憂いの少女たち

ヘカテーと同じ顔を持つ転校生・近衛史菜。優しいクラスメイトたちのサポートもあり、次第に学校生活に慣れた彼女は、悠二やシャナ、吉田や緒方たちとも一緒に昼食をとるようになっていた。だが、彼女への疑惑が消え去ったわけでない。マージョリーとヴィルヘルミナは、バルマスケの動きを世界各地に散らばるフレイムヘイズからも収集するなど、わずかな不安要素も見逃さない気構えでいた。そんなことを知ってか知らずか、悠二は新規オープンしたデカ盛りの店に行ってみようとみんなを誘う。そして、悠二と佐藤がデカ盛りラーメンの早食い勝負をしている最中、史菜が姿を消す。

家族の食卓

ヴィルヘルミナによる、シャナ以上に厳しい鍛錬。その皆あってか、悠二は徐々にだが新たな力を身に付けようとしていた。まだ確実ではないものの、それを「存在 の力を操れるようになった」成果とヴィルヘルミナは言う。一方、鍛錬を休んだ理由として、ヴィルヘルミナにシャナは「都合が悪い」とだけ伝えていた。いや、本当の理由は他にあった。とある抑えようのない気持ちが苛立ちとな り、シャナの態度を悪化させているのだ。そしてついに、シャナはその苛立ちをヴィルヘルミナにぶつけてしまう。そんなシャナの苛立ちを知ってから知らずか、悠二はその翌日、史菜の屋敷へと足を踏み入れる。

試練の前夜

急遽、明日から行なわれることになった一斉テスト。その対策のため、緒方の発案で悠二たちは勉強会を開くことになった。メンバーは、一緒にお弁当を食べている仲間に、会場を提供してもらう佐藤と田中、そして史菜を加えた8人。勉強会が始まると、自然と池とシャナがみんなに教える形になっていく。しかし、シャナは史菜が当然のように悠二の隣に座っているのが気に食わない。一方、みんなのためにとキッチンで夕食を作っていた一美も、史菜に優しすぎる悠二の態度に、寂しさを感じずにはいられなかった。だがその後、ふいに現れたマージョリーによって、少女たちの思いは大きく変わって行く。

池速人、栄光の日

暗闇にシャナが縦横に振った剣先がきらめき、その刹那、魔物たちの断末魔が響き渡る。だが、シャナの手に握られていたのは贄殿遮那ではなく、そんなシャナを暗闇の外で迎えたのも悠二ではなかった。そう、シャナたちは、史菜に遊園地デビューをさせるため、いつものメンバーと一緒に「ファンシーパーク」へ来ているのだ。幹事は、「いい思い出は、いい段取りから生まれる」が信条の池速人。誰もが彼を段取りをさせたら御崎高一と思っていた。また、彼自身も今回の段取りを成功させ、リーダーシップのとれる頼りになる男として、一美に少しでもアピールしようと決意を新たにしていたが…。

過去への扉

ヴィルヘルミナと加えた鍛錬は徐々にその成果を見せ始め、悠二は次の段階へまた一歩踏み出そうとしていた。一方、悠二の状況を知りつつも何も出来ない自分の腑甲斐なさを感じていた佐藤は、ついにマージョリーに「俺を、鍛えて下さい」と懇願する。マージョリーと一緒に街を出て、マージョリーの力になりたい。その「力が欲しい」と。だが、その真剣は眼差しに対し、マージョリーは冷たく言い放つ「アンタ、死ぬわよ」。そして、彼女がこれまでどんな生き様を味わって来たのか、その一部を…世界恐慌から数年経った頃のニューヨークで、あの“千変シュドナイと繰り広げた戦いとひとりのフレイムヘイズとの出会いとを語り始める。

哀しみのマイルストーン

先の大戦の残り香が漂うニューヨーク、エンパイアーステートビルにマージョリーはいた。対するは“穿徹の洞”(せんてつのほら)アナベルグ。だが、彼女が纏う青く燃えるトーガから次々に放たれた炎弾は、一向にアナベルグに当たる様子がない。その時、鈎爪が青いトーガを切り裂く。シュドナイによる不意打ち。絶対の危機に、半人前のフレイムヘイズ“魑勢の牽き手”(ちせいのひきて)ユーリィが駆けつける……。自らの過去を語り出したマージョリー。だが、その最中、ふいに話をやめ佐藤たちに質問を投げかける。「もし、仮にあんたたちがフレイムヘイズだとして…」。ある訳もない前提の質問、その意図とは…。

帰ってきた男

悠二の鍛錬は、自在法の構築を試みる段階にきた。幾度かの失敗の後、悠二が封絶に成功した時、シャナとアラストールからの祝い言葉はなかった。二人は封絶を染める銀色の炎から目が離せずにいたからだ。その日、学園祭まで3週間を切り、悠二のクラスでは出し物の最終決定と、地域の商店街まで繰り出すパレードへの代表者選考が行なわれていた。そして、シャナや一美だけでなく、史菜と悠二もまた出場者として選ばれた。シャナがその怪しい影に気付いたのは、そんな一日の夕刻だった。悠二の家から彼女を尾行する影に、シャナは容赦ないケリを入れる!

約束の二人

御崎高校学園祭「清秋祭」まであと3日。教室を使った研究発表、屋外テントでの模擬店、そして仮装パレードの衣装作り。準備に忙しいのは悠二のクラスだけではなく、クラス単位で泊まり込みを含めた作業が行なわれていた。祭りはその準備が最も楽しいと言われる。特に気の知れた仲間で作り出す祭りは特別であり、共に過ごす夜は格別だ。だが、その雑然とした興奮と歓楽の中、一美は自分自身に正直でいるための決意を新たにし、シャナもまた己の心に真正面から向か合おうとしていた。そしてヴィルヘルミナが帰ってきたその夜、悠二に新たな試練が突きつけられる。

清秋祭始まる

「清秋祭」初日、商店街を練り歩く仮装パーレドがスタートした。1年2組の仮装は、ロミオとジュリエットに扮した悠二と一美、ドロシーのシャナや魔法使いの史菜を有するオズの魔法使い。狙うはもちろんグランプリだ。コース沿いには多くの見物客に混ざり悠二の両親、そしてちょっと離れた場所にはヴィルヘルミナに無理矢理連れてこられたマージョリーの姿もあった。悠二の自在法に現れた銀色の炎、零時迷子を追うフィレス。悠二へ科せられたこの二つの試練が生んだ疑問に彼女の力を借りるため、ヴィルヘルミナはマージョリーに銀のことを打ち明ける決意をしたのだった。

収束、そして兆し

それは、清秋祭初日。校庭の特設ステージで、1年を中心とした仮装パレードの優勝者が発表された直後だった。突如ステージ上に竜巻が出現。悠二がその中心に捕らえられてしまう。琥珀色をまとう風…。だが、その中心から新たな色の炎が走り封絶が張られた刹那、マージョリーの表情が一変。群青の炎を爆発させたマージョリーは、トーガと化しその中心へ飛ぶ。「お願いだから、どうか話を…」。ヴィルヘルミナの必死の説得も自分を失ったマージョリーには届かないのか。一方、シャナは悠二を狙う“徒”と対峙していた。琥珀色の風を操るその者は、“彩飄”フィレス。その昔、零時迷子を作ったエンゲージリンクの一人だった。

永遠の恋人

フィレスが求めるヨーハン。マージョリーが狙う銀。それは本当に悠二の中にあるのか?その答えを知るため、シャナたちは二人に休戦と協力を約束させる。その夜、悠二が衰弱したフィレスに力を分け与える時、複数の自在法がマージョリーによって展開された。フィレスと彼女が作った零時迷子の間に流れる力を観測することで、零時迷子の全容を知ろうというのだ。だが、解ったのは新たな謎…正体不明の自在式の存在とフィレスがかけた“戒禁”の変質だった。進展ゼロ。その場にいた誰もが、全ての中心にいる悠二に視線を向けていた。とその時、一美がフィレスに言葉をかける。「私と、清秋祭を歩いてください」。

覚醒

意識だけを宿した傀儡を操る自在法『風の転輪』によって、マージョリーやシャナを、そしてかつての盟友ヴィルへルミナをも利用したフィレス。彼女は寸分の間も置かず、悠二へ……愛すべきヨーハンへと手を伸ばして行く。だが、悠二の胸から現れた腕は銀の炎に包まれていた。腕だけでなく、頭部、首、肩と、悠二の胸から這い出るように次第に露になっていく銀。その光景を見つめていたのは、シャナたちだけではなかった。遥か遠く、とある古城の一室でも幾組かの眼が、冷ややかにそして意味ありげな笑いを浮かべ見つめていた。そして、この事態に干渉する新たな存在が登場する。群青に輝く自在法へと歩み寄る影は……。

つきせぬ想い

清秋祭が終わりを告げた時、そこに近衛史菜の姿はなかった。ヘカテーの偽りの器だった個としての彼女はヘカテーと同化され、この数ヶ月を共に過ごしたクラスメイトたちの記憶からも失われてしまったのだ。その違和感に戸惑う一美。しかし、それが悠二のいる場所なのだ。その夜、佐藤の家ではマルコシアスが嘆いていた。「フレイムヘイズが3人もいて、まったく情けねぇ話だぜ」。零時迷子を作ったフィレスとヨーハンとの再会。銀の出現。降臨したヘカテー。手に余るほど謎の断片があるようで、彼らが手に出来た解答はほんのわずか…。だが、その場に居た他の二人…悠二と一美の心には、新たな決意が生まれていた。

それぞれの道

悠二から望んだ新たな鍛錬。それは、ヘカテーが打った刻印で「逃げも隠れもできない」なら、自分が強くならなくては…という意思表示でもあった。時を同じく、自分の道を見つけた佐藤は、共に「マージョリーに付いて行く」と決意した田中にその意思をぶつけていた。しかし、元通りになったとはいうものの、マージョリーの手により緒方を失った事実は、田中の心を大きく揺るがしていた。一方、迂闊に動けないシャナたちにとって不可欠な情報収集は停滞していた。アウトローから送られた情報に、依頼した調査以外の書類があまりも多く混在していたからだ。その状況に対し、ヴィルヘルミナは疑念を抱くのだが。

錯綜の悠二

悠二が「封絶」で見せた“銀”の炎。それは共に戦ってきたフレイムヘイズだけでなく「紅世の王」たちも大きなショックを与えた。誰も知らない“銀”の正体とは。何故その力が悠二の中にあるのか。答えの見つからない疑問と疑惑が交錯する中、シャナたちは悠二に新たな力の開花を期待する。以前から指摘されていた、悠二の研ぎすまされた感覚と状況分析能力から連想される自在師としての適正だ。マージョリーの指導で始まったその鍛錬は、悠二自身の頑張りもあり順調に進んで行く。だが、その頑張りをマージョリーは違和感として感じ言葉をかける「覚悟っていうのは、頭じゃなく腹で決めるものよ」。悠二の母、千草が体調を壊したのはそんな日の夜だった…。

言えなかったこと

いつか「いなかったこと」になる存在だから、大切な人を傷付けないためにも街を出なくてはいけない。新たに抱いた決意をひとり繰り返す悠二に声を掛けたのは、「紅世の徒」ザロービだった。実際に会うまで気付かないほど小さな存在の力の持ち主に、悠二は「マージョリーから炎弾の自在法を教わった自分ならひとりでも…」という気持ちを一瞬抱くが、それはすぐに押し止める。5つの身体を持つザロービが、近くの住宅地を指差し不敵な微笑みを浮かべたからだ。絶えず人質を取られた形のまま、悠二は河川敷から繁華街そして駅前のアケードへと為す術もなく進んで行く。これほどまでに小さな存在の力しかもたない敵の策略とは何か。悠二が見つけた答えとは…。

茜色の死闘

ザロービの計略を推測し、自らの力で最前の策を成し遂げた悠二の元へ、シャナとヴィルへルミナが合流した。だが、安心する間もなく新たな攻撃が3人を襲う。シャナの体を刻む無数の刃、ヴィルへルミナと悠二を飲み込んだ巨大な茜色の炎。それが一瞬にして同時に行われたのだ。そして、崩壊した商店街の瓦礫の上にかろうじて立ちあがった悠二の胸に、剣が突きつけられる。剣の主の名は懷刃サブラク。悠二を繁華街に誘ったザロービも、その動向を睨み照準を付けていたビフロンスも、サブラクが張った罠でしかなかったというのだろうか。気配を消し、時とともに傷を広げる自在法を操る敵に、ヴィルヘルミナ、マージョリー、そしてシャナ、3人のフレイムヘイズが翻弄する。

合わさる力

戦いの最前線にシャナが躍り出た時、彼女の傷は桜色の文様が浮かぶ包帯によって覆われていた。時とともに傷を広げていく自在法『スティグマ』。誰もが破れぬと思っていたその自在法は、幾たびにも渡る戦いの中、ひとりの有能な自在師によって完成の域まで練られ、今の戦いで完成を見たのだ。だが、サブラクの驚きはそこで終わらなかった。ザロービが現れた時からあり、彼との戦いが終わった後でさえ消えなかった違和感。ヴィルへルミナがひとりサブラクの相手をしている間、その正体に悠二は着目し、考え、結論を得たのだった。そして、3人のフレイムヘイズと1人のミステス、佐藤と一美の2人の人間が加わった作戦が始まる。

クリスマス・イヴ

2学期の最終日。メガネマンこと池速人はある決意をしていた。一美が悠二を好きだと知ってはいるものの、自分の気持ちにケリをつけるためにも行動しなければ、と。その夕方、一美もまた自分の気持ちにケリを付けるため、同じ思いを抱くシャナと待ち合わせをしていた。怖いけど、悠二にどちらかを選んでもらおう、と。一方、佐藤啓作は選択を終え、結論に至っていた。サブラクとの戦いの最中マージョリーの質問に対し出した答えを、確固たる意思に変え、最も頼りたくなかった父親の力も借りる決意をし、マージョリーに宣言する。「アウトローで働きたいんです」と。決意を固めたのは、悠二も同じだった。急用で帰って来た父・貫太郎から告げられた吉報。その事実が彼の思いを後押しする。「この世界を守りたい」と。

危難の胎動

御崎市に突如現れた、この世のものではない“殻”。その中に悠二の存在を感じたシャナだが、マージョリーの自在式だけでなく、ヴィルヘルミナのリボンですらその殻には傷一つ付けられない。これほど大掛かりな仕掛けを施せる者とは誰か? シャナの口から言葉が漏れる「バル・マスケ…」。 しかし、“殻”の中で何が行われているのか、シャナたちには推測すらままならない。一美がシャナの元に駆けつけたのはそんな時だった。そして彼女から告げられた言葉にシャナ達は驚愕する。 一方その頃、バル・マスケの三柱臣が一柱ヘカテーは、その目前に悠二から奪い取った零時迷子を置き、大杖『トライゴン』の錫杖を鳴らそうとしていた。

守るべきもの

バル・マスケの狙いは、紅世でしか生まれ得ないもの“徒”を、この世で生み出すことだった。不可能の壁を越えようとする計画の背後に居たのは“探耽求究”ダンタリオン。その狂気とも言える計画を止めるため、シャナたち動き出す。しかし、“千変”シュドナイや“頂の座”ヘカテーの守りは堅い。如何にすれば隙が生まれるのか…。激しい戦いの中、シャナとヴィルヘルミナが一筋の光明に気付いたのはほぼ同時だった。そして、シャナたちの反撃が始まる。悠二は、その戦いを時計塔の内部から感じていた。そして、零時迷子を抜き取られた自分に限界が迫りつつあることを知りながらも、走り続ける。守るべきもののために、「僕は僕の戦いをする」と。

灼眼のシャナ2005年

失われた存在

「私たち二人のどちらかに会いに来て下さい」。クリスマスイブの夜、悠二を呼び出したシャナと一美。しかし、二人とも悠二とは会えなかった。その夜を境に、悠二が消えたからだ。ただ姿を消したのではない。悠二という人間が存在した痕跡や、母である千草、学校の友人たちの記憶からも全て。それはまるでトーチの火が、存在の力が消えてしまったかのように……。だが、シャナは悠二が生きていることを信じていた。他の痕跡と一緒に消えるはずの手紙が、あの夜、悠二が書いてくれた手紙がまだ消えずに残っているから。そして、シャナは新たな戦いへ向けた準備をスタートさせる。

来たるべきもの

バル・マスケ三柱臣の一柱”千変”シュドナイが、フレイムヘイズの重要な連絡拠点・上海のアウトロー総本部を激しい炎に包み込んでいた頃、バル・マスケの居城『星黎殿』へ多くの“紅世の徒”たちが集まっていた。数千年前に失われた盟主の復活。それは、集団での戦いを好まないと言われる彼らが一丸となる象徴であり、フレイムヘイズとの全面戦争開始の合図でもあった。そして、フレイムヘイズもその動きを察するかのように、ゾフィーを兵団長とし来たるべき戦いへの備えを進めていた。シャナもまた、自らの力を高めるべくマージョリーとの特訓を重ね、新たな技を身に付けようとしていた。

旅立つために

それは“坂井悠二”であって、そうでないものだった。彼が降り立った地は、自身が生まれ育ち、母親が暮らし、仲間が居る街、御崎市。シャナと出逢い、自身がトーチだと知り、“徒”との戦いへ共に歩み出した場所。“坂井悠二”は、そんな記憶のひとつひとつを確認するかのように、市内を歩いていた。同時刻。シャナを始めマージョリーやヴィルヘルミナらは、接近する強大な”紅世の王”の気配に気が付いていた。まだ正体の分からぬその敵に対し、田中や一美とも連絡を取り合い準備をする中、マージョリーが確認した”紅世の王”の姿とは――

再会と、邂逅と

御崎市に現れた“紅世の王”。御崎大橋の主塔の上に立つその姿を見たシャナは困惑した。その王は、クリスマスの夜に消えた坂井悠二だったからだ。再会の喜びに浸ることもなく、マージョリーやヴィルヘルミナから、彼に疑問が投げ掛けられる。「どーせ三眼のババアが作ったオモチャなんでしょ?」「洗脳を受けた……あるいは、何者かに意識を乗っ取られたようであります」――と。だが、その返答は、意外な事実だった「余は坂井悠二だ。……ただし、それはこの世における通称。真名は当然、他にある」。そして彼は、黒き炎を全身に纏い、悠二でありながら異なる姿を現す。

囚われのフレイムヘイズ

『天罰神』である“天壤の劫火”アラストールと同位の存在、『創造神』“祭礼の蛇”。太古のフレイムヘイズたちによって『久遠の陥穽』へ葬られたはずのその神が、今蘇り、悠二と融合していた。そして、フレイムヘイズと”徒”の摂理通り、激突するシャナと悠二。彼の姿で話し、動き、そして刃を向けてくるその現実に惑わされたわけではないが、その決戦はシャナに敗北を突きつける。シャナを消滅させず、バル・マスケの居城へと連れ帰った“祭礼の蛇”。その目的とは――。その頃御崎市では、シャナを失い、マージョリーの回復も見込めない中、ヴィルヘルミナが、単身で奪還計画の準備を進めていた。

掌のなかに

マージョリーの代理として東京のアウトローに向かった佐藤にも、窮地が訪れていた。アウトローに入った途端、歓迎されるどころか、携帯電話などの連絡手段を取上げられ、監禁されてしまったのだ。それから1週間後。苛立ちと焦りでいてもたってもいられない佐藤の眼前に、突如フレイムヘイズが現れる。監禁部屋の扉を爆破する、という「中の人間のことを考えない」破天荒なやり方で。佐藤は、そのフレイムヘイズ――レベッカに、彼がここに来た目的を告げる。そして、マージョリーが昏睡状態であることも。今、世界に散らばるフレイムヘイズたちの目が日本に向けられようとしていた。

神門

「おまえは……要らない」。バル・マスケの盟主“祭礼の蛇”が望む『大命詩篇』。それに害悪を為す存在ならば、危険は取り除き、消し去るまで。ヘカテーの思いが水色の炎弾となって、力を封じられたシャナに向け打ち込まれる。炎弾が装飾を消し飛ばし、部屋の原型すらなくなろうとした時、事態を止めたのは“祭礼の蛇”坂井悠二だった。そして、その口からシャナを生かし捕らえている意味、“蛇”が悠二の姿を纏っている理由が語られる。そして、御崎市にいる吉田一美はとある疑問を抱いていた。フィレスに宝具『ヒラルダ』を託されたのは何故か。その思いに応えるかのように、ひとりのフレイムヘイズが御崎市を訪れる。

開戦

大命の第二段階が始まった。盟主“祭礼の蛇”の神体を帰還させるため、三柱臣たちが神門に向かったのだ。それに合わせるかのように、残された“徒”らは一斉に行動を開始。世界を舞台にしたフレイムヘイズと“徒”の全面戦争が始まった。主な戦場はヨーロッパ東部、そして日本からフィリピン、マレーシアに至る東アジアの二カ所。既にアウトロー東京総本部は封絶により連絡が途切れていた。その頃、かつて放棄された「とある宝具」を探す者がいた。その名はヴィルヘルミナ・カルメル。炎髪灼眼奪還計画を始めるために。

星黎殿へ

かつて一対の宝具として作られた『天道宮』と『星黎殿』には、隠された秘密があった。一定の距離に近づくと、双方を繋ぐ通路が修復され、自由に行き来できるようになるのだ。ヴィルヘルミナらは、その通路を利用し『星黎殿』内部からの奇襲を仕掛ける。目的はただひとつ、『炎髪灼眼の討ち手』の救出だった。強力な反撃を予想していたフレイムヘイズだったが、『星黎殿』に三柱臣の姿はなく、上空に浮かぶ謎の黒い鏡があるのみだった。“逆理の裁者”ベルペオルの宝具タルタロスによって力を封じられているシャナは、この事態の中、ただ一度訪れる契機を待ち続けていた。

交差点

星黎殿で起きた騒ぎを利用し、シャナは自分の力を封じてた戒めを解き、再び天目一個=贄殿遮那を手にする。だが、そのまま脱出することは適わなかった。複数の分身を放ち襲い来る紅世の王ウアルが立ち塞がったのだ。その分身を一体、また一体と倒しながら、シャナはマージョリーとの鍛錬を思い浮かべていた。「もっと先が、もっと大きな力があるはず」だと。その頃、外界からその気配を隠蔽していた“クリュプタ”を破壊された星黎殿の上空に無数の飛行機が飛来する。そしてフレイムヘイズ軍の指揮をとる総司令ゾフィーの号令が響く。「これより交差点作戦を開始します」。

聞こえる、想い

地上へ墜ちた星黎殿を中心に展開する徒。空からあまたの軍勢を降下させ出城を築いたフレイムヘイズ軍。総力戦を前に息を殺し睨み合う二つの軍勢の間に、紅蓮の輝きが走った。その中心に立つシャナ。その口から告げられた『神門』の秘密と、新たな目的・神門を通った悠二と三柱臣の阻止。徒たちの策略を露に、フレイムヘイズの為すべきことを明確にしたその言葉を切っ掛けに、人ならぬ者、人を超越した力が相見える戦乱の火蓋が切って落とされる。

誓いの言葉

シャナが『神門』から詣道へと足を踏み入れた直後、行く手を阻むように、茜色の炎が吹き上がり、無数の剣のシルエットが揺らめいた。かつて倒滅したはずの紅世の王“壊刃”サブラクが再び現れたのだ。シャナを先に行かせ、その場に残るヴィルヘルミナ、カムシン、レベッカ。侮れない敵だが3人ならば……。しかし、新たな問題が彼らを不利な状況へと貶めてしまう。詣道の奥に位置する祭殿へバル・マスケが辿り着いたのは、ちょうどその頃だった。そして、ベルペオルの眼帯が弾け、ヘカテーの声が祭殿に満ちたとき、“祭礼の蛇”本体が咆哮を上げる。

狭間へと、狭間から

シャナは再び悠二と出会うことができた。だが、そこは“祭礼の蛇”の上であり、二人の間には贄殿遮那とブルートザオガーが、そして互いに相容れない決意があった。「シャナ、今からでも余の大命の元で……」「悠二こそ、バル・マスケと手を切って私に……」。一方、サブラクと3人のフレイムヘイズの戦いには、変化が起きようとしていた。ヴィルヘルミナとレベッカが傷つき戦いから一時離れる中、カムシン最大の自在法『儀装』により巨人が出現し、サブラクを迎え撃つ。しかし二つの戦いを余所に、巨大な蛇は神門へと帰還の道を進んでいく。

大命宣布

銀色の粒子へと砕かれた『神門』。しかし、それはフレイムヘイズ兵団の作戦敗北を意味していた。『神門』から顕現する巨大な蛇。その咆哮に続き、復活を遂げた創造神“祭礼の蛇”が宣布をはじめる。「余は新たに、この世の移し世、ザナドゥを創造する」。その姿と声に“徒”たちは士気を上げ、戦況は一気に変わって行く。戦いの第一目的を失い、士気が急激に下がっていくフレイムヘイズたち。各所からの報告を受け、総司令ゾフィーは撤退を最良の策と決断、作戦名『引潮』を開始する。シャナもまた、本隊を援護すべく持ち場へと急ぐ。紅蓮に輝く翼を広げ、その胸にアラストールを抱きながら。

雨中(うちゅう)の敗走

シャナたちの作戦『引潮』がスタートした。戦場に視聴覚を妨げる自在法『トラロカン』の雨が降りしきる中、瑠璃色の炎を灯す塔へと急ぐ傷ついたフレイムヘイズたち。だが、敵に退路を見せる危い作戦の真意に気付いた者がいた。三柱臣が一人シュドナイだ。「あの囮に追撃部隊を引き付けるつもりか」。その推測を元に行動しようとしたシュドナイの眼前に、シャナとヴィルヘルミナが現れる。フレイムヘイズ兵団壊滅を阻止するため、最悪の“紅世の王”と呼ばれるシュドナイを止めるシャナたちの戦いが、雨に煙る空で火花を散らす。

再び、戦いへ

創造神復活の阻止、星黎殿の攻略、バルマスケ首脳部の打倒。何一つ成し遂げられなかった大敗としかいえない状況の中、シャナは言う。「私たちに打てる、最後の一手がある」と。だが、それにはある決意が必要だった。“祭礼の蛇”によって崩された、世界のバランスを守るため戦って来たフレイムヘイズの使命に代わるもの。戦いに向かう、恨みや憎しみではない決意が。フレイムヘイズたちがその行動に躊躇するころ、星黎殿では新たな宣布がなされようとしていた。――楽園『ザナドゥ』創造の宣布だった。

誰が為に

シャナはニューヨークに居た。古来より南北アメリカ大陸を“徒”から守ってきた強大にして特異な討ち手・大地の四神――今は既に三神となった彼らの共闘を得るために。『引潮』作戦で失われたその一神センターヒルに託された言葉を残る三神に伝えるシャナ。その頃、『ザナドゥ』創造の地と宣布された日本では、楽園へ渡るため駆けつけた“徒”と、それを阻止せんとするフレイムヘイズたちの戦いが繰り広げられていた。そのさなか、一人の少年・坂井悠二が、今までの姿で御崎市に再び現れる。

闘争の渦

御崎市の空を覆う巨大な蛇。その下で浮遊する星黎殿へと掛けられた橋を、“祭礼の蛇”悠二と共に一美は歩いていた。人間である一美にしかできないことを知るために。悠二が望み成し遂げようとしていることを見極めるために。だが、導かれた場所、見慣れている宝具『玻璃壇』の上にその身を置いたとき、悠二と自分が立っている場所の違いを一美は痛感する。そして、大命の最終段階が動き出し、星黎殿が新たな形態へと姿を変え、御崎市のあらゆる場所に炎が揺らめき出す。今まさに御崎市が闘争の渦と化そうとする時シャナは・・・。

彩飄が呼ぶもの

楽園『ザナドウ』を求め集まる幾千幾万の“徒”と、その前に立ちはだかるフレイムヘイズたち。御崎市を覆う封絶の至る所で繰り広げられる戦い。その中心に、漆黒の炎と紅蓮の炎があった。『星黎殿』が変形し生まれた要塞・真宰社(ルビ:?)上空で太刀を合わせるシャナと悠二。互いの思いを知りながら、異なる道を歩む相手を止めるために対峙する二人。その戦いを見つめていた吉田一美はある思いを抱く。「自分が、相手が望まない、すれ違いも愛」。そして、その胸に下げられた『ヒラルダ』に手を添える。

世界の卵

楽園『ザナドウ』創造を担う「世界の卵」を背にシャナと戦ってた悠二の横に、バル・マスケ三柱臣の一柱、シュドナイが並び立つ。と同時に、シャナの横にもマージョリー、そしてヴィルヘルミナが現れた。その頃、“紅世の徒”に神託を伝播する力を持つ眷属・ロフェカレを捕らえ、戦況を少しでも変えようとしていたフレイムヘイズたちは、ロフェカレから意外な事実を知らされる。ロフェカレがシャナの計画を伝播できない理由とはなにか……。また、宝具『ヒラルダ』の発動によって現れ、吉田一美を連れ去ったヨーハンとフィレスの行き先とは……。

一つの理

ついに、シャナの真紅の炎が「世界の卵」へと届いた。だが、物質的な破壊は起きず、真紅の輝きは波紋となって卵に染み渡っていく。直接攻撃を許した失態よりシャナの目的が破壊でないことに驚き、戸惑う悠二、そして三柱臣たち。「私たちは、創造される新世界に」「ひとつの理(ことわり)を織り入れる」。封絶内にシャナとアラストールの堂々とした声が響き渡る。しかし、これが戦いの終わりではなかった。真宰社の北方で、西方で。多くの場所でフレイムヘイズとバル・マスケとの死闘は続いていた。

異邦人(いほうじん)の夢

真宰社の基部で起こった爆発は、その遥か上空から目撃したシャナと悠二に一時戦いを忘れさせるものだった。何故なら、その爆発の中心には、ヨーハンとフィレス、『エンゲージ・リング』の二人に連れ出された吉田一美がいるはずなのだ。心配を隠せないシャナは『エンゲージ・リング』と深い絆を持つヴィルヘルミナに救援を指示する。一方、その爆発を見ていたシュドナイはあることに気付く、「何故『エンゲージ・リング』が応戦しない」。バル・マスケも、シャナたちフレイムヘイズも知らない何かが、そこで動こうとしていた。

神の夢

改変を成功させたシャナ。だが、大命は未だ止まらず、盟主たる“祭礼の蛇”と融合した悠二の表情には余裕の笑みが浮かんでいた。まもなく0時を迎えようとした時、“祭礼の蛇”が口を開いた「これは、虚実の虚」であると。長らく研究を重ねた結果、教授は『零時迷子』の機能の本質と動力源を探り当て、ひとつの式を作り上げた。そこから得られる無制限の力を元に創造神”祭礼の蛇”は神威召還を発動させようというのだ。そして、時計の短針に長針が重なっていく。それは、シャナたちフレイムヘイズの敗北の瞬間になってしまうのだろうか。

涯てより開く

創造神“祭礼の蛇”の神威召還により、新世界ザナドゥが誕生した。シャナたちによる自在式「人間を喰らわずの理」を織り込んだまま。そして、戦闘は終息へ向かい、多くの“徒”が新世界へと、それを追うフレイムヘイズもまたこの世から旅立って行く。しかし、『二人』の戦いは終わっていなかった。御崎大橋に、シュドナイを引き連れた悠二が。そして、その眼前にはシャナが。一人の少年と一人の少女、二人の想いが解き放たれ、そしてぶつかり合う。

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